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おにぎりの「適正価格」 ミシュラン店の問題提起

コメ離れが進んでいる。1人当たりの消費量は半世紀で半減。供給を絞る国の施策で価格が上昇し、さらに需要が冷え込む負のスパイラルに陥っている。「『主食』の名にあぐらをかいていたら衰退するだけ」。市場関係者も危機感を募らせる。

頼みの綱は、おにぎりだ。他の産業と同様、製品の付加価値を高め、素材の需要も喚起する。「お手ごろ」な価格は成長の余地もある。現代のライフスタイルにも合う日本のソウルフードは「コメ文化」の進化を担う。

【前回記事】 和食の危機、救うのは外国人 増える板前修行

■ミシュランは「ブーム」

総務省家計調査によると、1人当たりの年間支出がコメは2000年から17年までに4割減ったが「おにぎり・その他」は同じ間に4割増えた。「おにぎり離れ」は起きていない。

具は約20種類。目の前で手際よく握ってくれる(おにぎり浅草宿六=東京都台東区)

具は約20種類。目の前で手際よく握ってくれる(おにぎり浅草宿六=東京都台東区)

「ミシュランガイド東京」に18年、おにぎり専門店が初めて掲載された。54年創業の「おにぎり浅草宿六」(東京・台東)。東京で一番古いおにぎり店として、5000円以下で良質な食事ができる「ビブグルマン」部門に登場した。「ミシュランの掲載は一種のブームだと思っています」。店主の三浦洋介(40)には人ごと。味へのこだわりは揺るがない。

梅干しやサケなどの定番から、山ごぼうや紅しょうがなどの変わり種まで。すし店のようなガラスケースに並ぶ約20種類の食材は全ておにぎりの具だ。カウンター越しに注文すると、三浦が手際よく握って一つずつ手渡してくれる。創業から変わらないスタイルだ。

コメの炊き具合。具とのりとのバランス。握り方と食感の関係。シンプルなように見えて奥深い

コメの炊き具合。具とのりとのバランス。握り方と食感の関係。シンプルなように見えて奥深い

祖母の代から続く老舗の3代目として、09年に店を継いだ。ごはんと具、のりのバランスに気を配り、コメの味を生かす素材を吟味する。1番の人気メニューのサケも、最高級の紅ザケでなく、脂が乗った時鮭(ときしらず)を選ぶ。毎日食べて飽きないようコメの炊き加減を毎日変え、ふわっとした食感を出すため握る回数は3回に抑える。「子供の頃にすり込まれたおいしさ」が原点にある。

■300円の壁

ただ、味を追求したらもうかる、という世界ではない。おにぎりには「お手ごろ」な価格のイメージもつきまとう。市場をリードするコンビニエンスストアでは110~130円(税別、以下同)が中心価格帯だ。一般社団法人おにぎり協会(東京・港)理事で、年間1000個は食べる関克紀(41)は「今の一般的な相場感は200円前後。素材や作り方へのこだわりと比べると安い」と話す。

「コンビニのおにぎりは価格を100円台に収める前提で、最善の食材や素材の味を生かす調理法を研究している」。三浦は同業者に敬意を払いつつ、積み重ねた味の安売りはしない。宿六のメニューは270~290円が大半。「僕が言うことではありませんが、今の価格に満足しているお客さんもいると思います」

「子供の頃にすり込まれたおいしさ」が原点にある

「子供の頃にすり込まれたおいしさ」が原点にある

宿六も原材料費の上昇に合わせて値上げはしてきたが、三浦にも「お客さんは300円台のおにぎりしか出さない店だとしても行きたいだろうか」との葛藤がある。庶民の味を担うからこそのジレンマ。宿六の原価率は一般的な飲食店の目安とされる3割を超えるという。ここ2~3年、740円の筋子おにぎりは提供すらできていない。サケの不漁などで筋子が高騰し、1キロ2万円のプレミア価格がつくこともあるからだ。常連客も「700円なら食べたいけど、1000円なら注文しないかな」。

そんなとき三浦の頭の中によぎるのはラーメンの存在だ。かつては1杯数百円が相場だったが、今は1000円を超えるものも珍しくない。「自分はおいしいおにぎりを握り続けるだけ。料理人は市場経済の中で決められた価値を受け入れるだけ」。三浦の気概だ。

■減る消費、上がる価格

コメを巡る状況は厳しさを増している。1人当たりの消費量は右肩下がり。18年度の53.8キログラムは最も多かった60年代の半分ほど。「炊飯が面倒」「パンを食べた方が手軽」と考える消費者も増えている。

需要が減っているにもかかわらず、価格は上昇している。農林水産省の調査では、出回り始めた19年産は全銘柄平均で1俵あたり1万5819円。上昇は5年連続となった。背景には飼料用など非主食用への手厚い補助金がある。食卓に出回るコメを減らす施策が、さらに需要を冷え込ませる。

中食業者の業界団体、日本炊飯協会(東京・豊島)福田耕作顧問は「需要が減ったから供給を減らす縮小均衡に未来はない」と警鐘を鳴らす。

「コメも新たな需要を開拓しなければ衰退するだけ」と話す川西孝彦

「コメも新たな需要を開拓しなければ衰退するだけ」と話す川西孝彦

■共倒れへの危機感

かつて全国で400社ほどあったコメ卸は16年には約250まで減った。関西のコメ卸、幸南食糧(大阪府松原市)社長の川西孝彦(38)は「これまで通りの売り方ではだめだ。主食だからとあぐらをかいてはいられない。新たな需要を掘り起こさなければ衰退するだけ」との危機感を持つ。

近年の米価上昇で実需は冷え込む。炊飯を嫌う消費者のコメ離れも進むなか、手軽さで消費が伸びているおにぎりに目をつけた。きっかけは外食企業リタウン(大阪市浪速区)社長の松本篤(44)との居酒屋談議。「熱々のおにぎりを手軽に食べられる店って、ありそうでないよね」。半年後の今年4月には専門店「おにぎり竜」を大阪・曽根崎新地にオープンした。

「おにぎり竜」(大阪市北区)の店主は元ボクシング世界チャンピオンの山中竜也(24)

「おにぎり竜」(大阪市北区)の店主は元ボクシング世界チャンピオンの山中竜也(24)

■消費者あっての文化

コメは山形産「つや姫」を100%使い、塩や水にもこだわる。生卵の黄身を使った300円の看板メニュー「乱王しょうゆ漬け」が一番の売れ筋。最も安い「塩おにぎり」で200円。最も高い「ウニ味噌」は400円だ。「『握りたて』と『味わい』の付加価値があれば300円台でも十分勝負できる」(川西)。繁華街のまっただ中。「ラーメン代わりの締めに」とリピーターも目立ってきた。

「消費者との接点をどれだけ作っていけるかがコメの生き残りに直結する」と川西は強調する。消費者のニーズを細やかにくみ取らなければ「文化」も次世代に伝えられない。

■年間22億7千万個

78年にコンビニで初めておにぎりの販売を始めたとされるセブン―イレブン・ジャパン。今や年間販売数は約22億7千万個。人気のいれたてコーヒー「セブンカフェ」(同約11億杯)の倍以上のペースで現代人の胃袋に吸い込まれている。片手で食べられる手軽さは、現代のライフスタイルにも合う。同社商品本部長の高橋広隆(46)は「パスタ、麺、パンなど炭水化物の取り方は多様化しているが、最近の銘柄米人気などをみると、コメ食の成長余地をまだまだ感じる」と考えている。

開発の工夫は惜しまない。例えば精米。玄米は一粒一粒大きさが違う。一律では大粒のおいしい部分を削り、小粒だとぬか層を残す。19年から粒の大きさごとに精米すると、うまみが増し「変化は劇的」(高橋)。炊飯前に浸す水の温度にまで気を配る。

セブンイレブンでは年間22億7千万個のおにぎりが売れる

セブンイレブンでは年間22億7千万個のおにぎりが売れる

■価値競争に際限なし

「価値競争に際限はないが、価格競争の先はタダ」というのが高橋の持論だ。原材料価格の上昇や品質向上で製品価格は上昇傾向だが「販売個数が下がらないことが評価だと信じたい」

和食が廃れたのは、コンビニ食が取って代わったから。コメを食べないのは、食文化が洋風化したから。本当にそうだろうか。おにぎりの人気をみると、それだけでは説明がつかない。顧客目線。味の追求。そのうえでの気概。「作られた価値」から「求められる価値」へ。おにぎりの担い手の進む道が、そのまま和食の道しるべにもなる。

日本経済新聞電子版より