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いなり寿司にはもっちりお米が意外と合う!?

「ごはん料理とお米」の相性の話
いなり寿司.jpeg 「赤飯やおこわにはもっちりとしたお米」「酢飯には粘りが少なくあっさりとしたお米」「炒飯にはパラリとしたお米」というふうに、お米料理とお米の品種には定番とされる組み合わせがあります。

しかしながら、先入観を捨ててみると、「この食べ方にこの品種は合わない」と思っていた組み合わせが意外とベストマッチングすることもあるのです。
升と白米.jpeg たとえば、低アミロース米(※1)の「ミルキークイーン」という品種は、コシヒカリよりも粘りが強くてやわらかく、まるでもちごめのよう。特徴的なだけに、人によって好みが分かれやすいお米です。

(※1)お米のデンプンはアミロースとアミロペクチンで構成されていて、アミロースの割合が低いほど粘りが強くやわらかくなる。

ミルキークイーンに合う食べ方と言えば、冷めても硬くなりづらい特性を活かした「おむすび」や「お弁当」の他、やわらかめの「おこわ」や「赤飯」にするといった方法しか耳にしたことはありませんでした。

個人的には、味が濃厚なミルキークイーンはシンプルに塩むすびにするか、おかずは漬物程度にして白米でそのまま食べるか、あるいは他のお米にブレンドするという食べ方が合っていると思っていました。
そんなある日、ミルキークイーンを使った「鯖の棒ずし」と「いなり寿司」のおすそ分けをいただきました。

私がこれまでに食べた鯖の棒ずしは、粘りが強いながらもやわらかすぎず弾力がある酢飯で、いなり寿司は粘りが少なくあっさりとした酢飯でした。
サバの棒寿司.jpeg

「ミルキークイーン×鯖の棒ずし」「ミルキークイーン×いなり寿司」の組み合わせは考えたこともありませんでしたが、まず鯖の棒ずしを食べてみると...「な、熟れ鮨(なれずし)!」と衝撃を受けました。魚とお米と塩で乳酸発酵させた熟れ鮨は、発酵が進むほどにごはんが溶けていきます。同じように、この酢飯もまるで発酵し始めのように噛むとわずかに溶けていくような食感だったのです。

鯖.jpeg 鯖の棒ずしは、鯖の半身に棒上にした酢飯をのせて、ふきんで巻いて締め、昆布で巻きます。一般的には傷みづらいよう、酢飯の粒をつぶさないようにしながら、粒の隙間の空気を抜いて作るそうです。そのため、やわらかいミルキークイーンの酢飯の粒同士がぴったりとくっつき合って溶け合うような食感が、熟れ鮨を彷彿とさせたのです。

"ミルキーいなり"と"コシヒカリ炒飯"
そして、今度は「いなり寿司」を食べてみると、これもまた酢飯が口の中で溶けていくような食感。こんなふうに書くと、一般的ないなり寿司の酢飯との違いに、「それっておいしいの?」と思われそうですが、これがおいしいのです。おこわのようなもちもち感はないのに、あまじょっぱさと粘りのせいか、どことなくおこわのような味わい。
五目いなり.jpeg

そして、重要なのは、大きさです。おそらく一般的な「いなり寿司」の大きさであれば、ミルキークイーンは合わなかったかもしれません。

では、なぜこのいなり寿司がおいしいのかと言うと、揚げと酢飯の味のバランスの良さと、酢飯に混ぜ込まれたひじきと大豆と白ごまの食感や風味を絶妙にまとめる小ぶりなサイズだったからです。腕とセンス次第でお米と米料理の食べ合わせは新たな可能性が開けると確信しました。

また、同じお米でもひと手間を加えるだけで、一般的に「合わない」と言われている食べ方に合う場合もあります。
たとえば、粘りが強いコシヒカリは炒飯には合わないという意見もありますが、炊いたコシヒカリのごはんを冷蔵庫で2日かけて丁寧に管理しながらベータ化(※2)させ、提供時に強い火力で炒めることで、パラリとした炒飯を生み出しています。

(※2)お米は加熱や水分量の増加によってデンプンを「アルファ化」させるとふっくらとやわらかくなり消化しやすくなる。これが炊飯の状態。ここから冷却や乾燥によって硬い状態に戻ることを「ベータ化」と言う。
メディアで目にする「◯◯に合うお米」の情報はあくまで参考程度にして、時にはその情報とはあえて違うお米を選んだり、「合わない」と言われている組み合わせにあえて挑戦してみたりすると、意外なおいしさが見つかることもあるかもしれません。「ひと工夫」があれば、お米の楽しみ方は無限に広がりそうです。